ECのSEO対策とは? コンテンツとテクニカルの違いや注力ポイントを解説
TRYANGLEアナリティクスチームの高橋です。
ECサイトの集客を考えるうえで、重要な施策のひとつが「SEO対策」です。広告費の高騰やCookie規制などにより、リスティング広告やリターゲティング広告だけに依存する集客は難しくなっています。そんな中、検索エンジンから安定的に訪問者を獲得するための“SEO基盤”を整えることが、EC事業における持続的な成長の鍵です。
しかし、ECサイトのSEO対策は、一般的なコーポレートサイトやオウンドメディアのSEOとは性質が大きく異なります。商品数が多く、カテゴリ構造が複雑で、さらにフィルタ機能や動的生成ページなどが絡むため、「正しく評価されにくい」構造になりがちです。そこで重要になるのが、EC特有の課題に対応したテクニカルSEOの考え方です。
コンテンツSEOとテクニカルSEOの違い
SEO対策をやみくもに進めてはいけません。注力すべきSEO対策から優先順位をつけて対応しましょう。SEO対策は大きく分けると「コンテンツSEO」と「テクニカルSEO」の2つの領域に分類されます。まずそれぞれの特徴を整理してみましょう。
ECサイトのコンテンツSEO
コンテンツSEOは、ユーザーの検索意図に応える「質の高い情報」を発信することで評価を高める手法です。検索キーワードは検索意図によって以下の4つに分類されます。ECにおいてはBuyクエリ(買いたい)が最も重要です。
Knowクエリ(知りたい)Goクエリ(行きたい)Doクエリ(やりたい)Buyクエリ(買いたい)
上記の検索意図に沿って、ECサイトでは具体的には以下のような対策を行います。
【Buyクエリ】(買いたい)
購入の意思決定に近く、商品そのものやカテゴリを探しているユーザーが対象です。ECサイトの売上に最も直結するページ群です。
・商品一覧(カテゴリページ)での説明コンテンツ強化
「スニーカー メンズ」「冷蔵庫 4人用」など、特定の商品カテゴリを探しているユーザーの受け皿です。このページの利便性を高め、選び方などの情報を補足することが、購入の後押しに直結します。
・商品詳細ページでの説明コンテンツ強化
「商品名」や「型番」で検索する、購入意欲が最も高いユーザーが到達するページです。商品の魅力やベネフィット、スペックを詳細に説明することは、Buyクエリに応えるための最重要施策です。
【Knowクエリ】(知りたい)
まだ具体的な商品は決まっておらず、悩みや疑問を解決したい、あるいは情報を収集したいユーザーが対象です。将来の顧客を育成する役割を担います。自然検索による集客が見込めますが、購入に直結しづらいためECでのコンテンツSEO対策では優先度は低いです。
・ブログ記事の作成
「スニーカー 選び方」「ダウンジャケット 手入れ方法」「キャンプ 持ち物 リスト」といった、悩みやノウハウ(How to)を検索するユーザーに応えるコンテンツです。ここで悩みを解決し、信頼を得てから商品ページへ誘導します。
【両方(Knowクエリ + Buyクエリ)】
Knowクエリ(情報収集)とBuyクエリ(購買)の中間的な役割、あるいは両方の役割を担う施策です。
・特集/イベントページの作成
この施策は、ターゲットにするキーワードによって役割が変わります。
Knowクエリ寄り:「父の日 ギフト おすすめ」「彼女 クリスマスプレゼント 30代」など、アイデアを探しているユーザーの受け皿
Buyクエリ寄り:「新生活応援セール」「ブラックフライデー 対象商品」など、特定のイベント(購入機会)を認知しているユーザーの受け皿
キャンペーンや特集ページを作成するときに、検索意図も考慮した構成やコピーライティングを意識していきましょう。
ECサイトのテクニカルSEO
一方、テクニカルSEOは、検索エンジンがサイトを正しくクロール・評価できるようにする技術的な最適化のこと。テクニカルSEOは大きく分けると「ユーザーエクスペリエンスの向上」と「クローラビリティの向上」に分類できます。
ユーザーエクスペリエンスの向上(読み込みスピードの改善など)
サイトの「快適さ」や「使いやすさ」を技術的に担保する施策です。GoogleはCore Web Vitals(コアウェブバイタル)と呼ばれる指標(LCP、INP、CLS)を用いて、ページの快適性を具体的に測定し、検索順位の決定要因(ランキングシグナル)に組み込んでいます。
ユーザーが「ページの表示が遅い」「レイアウトが崩れて押し間違えた」といったストレスを感じると、サイトから離脱してしまいます。テクニカルSEOによるUXの改善は、この離脱を防ぎ、コンバージョン率(購入率)を高めると同時に、Googleからの評価を高めることにも直結します。
具体的には以下のような対応を行います。
画像の圧縮と最適化高画質を維持しつつファイルサイズを軽くし、ページの読み込み速度(LCP)を向上させるCSSやJavaScriptのファイル圧縮と最適化不要なコードを削除・圧縮し、ブラウザの処理負荷を軽減。表示速度を向上させるレイアウトシフトの抑制CLSの改善。画像や広告の領域をあらかじめ確保し、読み込み途中でレイアウトが「ガタつく」のを防ぎ、誤クリックなどのストレスをなくすコンテンツ読み込みタイミングの最適化LCPの改善。ファーストビュー(最初に表示される画面)の主要なコンテンツを優先的に表示させ、ユーザーの体感速度を上げる使用フォントの最適化WEBフォントを多用すると、フォントファイルのダウンロードが多発し、読み込みスピードに悪影響を与えるため、使用を精査・最適化するタグマネージャーによるタグ発行タイミングの最適化複数の広告代理店やツールベンダーが同じような変数の設定やJavaScriptの処理を重複して設定することで、ブラウザの処理負荷が高まり、読み込みスピードに影響が出るため、これらを整理・統廃合する外部ドメイン接続の効率化ライブラリや広告タグなど、外部ドメインから読み込まれるリソースに対し、ブラウザにあらかじめ接続先ドメインを認識させておくことで、実際の通信にかかる時間を短縮し、読み込みスピードを改善する
クローラビリティの向上
検索エンジン(クローラー)がサイト内のページを「見つけやすく(クローラビリティ)」し、その内容を「正しく理解できるようにする(インデクサビリティ)」ための施策です。 特にECサイトは商品数やカテゴリが多く、ページ数が膨大になりがちです。クローラーにサイトの隅々まで効率よく巡回してもらい、各ページの価値(商品名、価格、在庫情報など)を正確に評価してもらうための「土台作り」が不可欠です。
具体的には以下のような対応を行います。
構造化データマークアップクローラーに対し、ページ内の情報が「これは商品名です」「これは価格です」「これはレビューの星の数です」と、その意味を明確に伝える。検索結果に価格や星評価が表示される「リッチリザルト」にも繋がり、検索画面上でのユーザーのクリック率向上にも寄与するURL正規化canonicalタグを使用し、色違い・サイズ違いなどでURLが分かれていても「これが代表(正規)のページです」とクローラーに教える。これにより、重複コンテンツとして評価が分散するのを防ぎ、クローラーの巡回効率も高める)サイトマップの作成sitemap.xmlというサイト全体の「地図」ファイルを作成・送信し、クローラーに全ページの存在を知らせ、クロールの漏れを防ぐ画像検索最適化altテキスト(代替テキスト)を適切に設定することで、クローラーに「何の画像か」を伝え、画像検索からの流入を促進する。これは同時に、画像が表示できない環境のユーザーへの配慮(アクセシビリティ向上)にもなる
コンテンツSEO × テクニカルSEOで成果を最大化
ECのSEOは、ユーザーと検索エンジンの双方にとって“わかりやすいサイト”を目指すことがゴールです。テクニカルSEOはそのための「土台」をつくる施策であり、コンテンツSEOはその上に「価値」を積み上げていくイメージです。
たとえば、構造化データを整えることでGoogleが商品情報を正確に認識できるようになり、検索結果に価格や在庫などがリッチリザルトとして表示されます。また、内部リンク構造を最適化することで、Googleのクロール効率が上がり、重要なページが確実に評価されやすくなります。つまり、テクニカルSEOが整って初めて、コンテンツSEOの成果が最大化されるのです。
結論として、ECサイトでは商品ページやカテゴリページといった構造的な要素が多いため、一般的なサイトと比較して、テクニカルSEOの重要性が非常に高いといえます。
ECサイトにおけるSEO対策の構造的な問題
ただし、実際にECサイトのSEO対策を進めようと思ったとき、大きな問題に直面します。思ったより効果が出ないのです。弊社が数々のEC事業支援を行ってきたなかで、この問題の背景には、ECという仕組みの特性から生じる構造的な問題があると考えています。
まず具体的には、以下のような技術的課題が頻繁に見られます。
商品一覧やフィルタ機能(ファセットナビゲーション)でURLが爆発的に増え、重複ページが発生するJavaScriptで動的に生成されたコンテンツが、Googleに正しく読み取られないページ速度が遅く、Core Web Vitals(LCP・CLSなど)の評価が低い商品画像の容量が重く、表示パフォーマンスが悪化している多数の外部タグ(広告・解析ツール)の管理が複雑化し、レイアウト崩れ(CLS)や読み込み遅延を引き起こしている
SEO対策が「暗礁に乗り上げる」本当の理由
これらの課題はコンテンツの工夫だけでは解決が難しく、テクニカルなアプローチが不可欠です。しかし、EC担当者にとって、これら広範囲かつ専門的なSEO施策について、技術的観点や改善インパクトから「優先順位」をつけて推進することは非常に困難です。
そのため、多くの場合はSEO専門業者へ依頼することになりますが、ここに「ECサイト特有のジレンマ」が発生します。
SEO業者:理想的なSEO要件(こうあるべき)は提示できますが、ECサイト固有の複雑なシステムに対し、その施策の「実装可否」や「開発難易度」までを正確に見積もることは困難です。
システムベンダー/制作会社:SEO業者から提示された課題に対し、「実装の可否」や「コスト感」を算出することはできますが、その施策が「SEO対策としてどれほどの改善インパクト(効果)を持つか」についての言及は難しいケースが多いです。
結果としてEC担当者は、「SEO業者の理想」と「ベンダーの現実(コスト)」という2つの専門的な意見の間で板挟みになります。
本来、両者の意見を調整し、コストとインパクトを比較して「優先順位付け」や「代替案(運用でカバーするなど)の検討」といった方針決定を行う必要がありますが、「それが難しいからこそ専門家に依頼している」のが実情です。
この体制的なミスマッチにより、施策の検討が暗礁に乗り上げたり、多大な時間とコストをかけて実装したにもかかわらず効果が薄い結果になったりと、SEO対策におけるコストパフォーマンスが発揮しづらいという問題に直結しています。
構造的ジレンマを解消するTRYANGLEの「ECSEO(エクシオ)」
この「SEO業者」「システムベンダー/制作会社」「EC担当者」の間で発生する構造的なジレンマを解消し、ECサイトのSEO対策を確実に前進させるのが、弊社のEC特化型テクニカルSEOサービス「ECSEO(エクシオ)」です。ECSEOは、この「体制的なミスマッチ」を解決するために設計されています。
TRYANGLEは主要なECシステム(EBISUMART、ecbeing、Salesforce Commerce Cloudなど)にも精通し、サイト構造を理解したうえで最適な改善を実現します。
テクニカルSEOとECサイト実装の経験を豊富に持つメンバーによって、「提案で終わらないSEO改善」が可能です。
「SEO」と「実装」のワンパッケージ化によるスピードとコスト削減
ECSEOの最大の強みは、TRYANGLEがこれまでECサイトの構築要件定義、サイト制作・実装、データに基づいた運用支援までを一貫して手掛けてきた高い専門性と実行力にあります。
従来の体制では、SEO業者の提案をシステムベンダーが精査し、EC担当者が判断するというプロセスで、「対策内容の洗い出し」「実装可否の判断」「実装要件の決定」までに膨大な時間と調整コスト(要件定義コスト)が発生していました。
ECSEOは、「SEOの理想」と「システムの実装」を切り離しません。効果の高いSEO対策に絞って「SEOインパクト」と「実装難易度」を最初から両立させ、それをワンパッケージでスピーディに実装まで落とし込みます。
これにより、EC担当者を悩ませてきたベンダー間の調整業務や実装判断の負担を大きく軽減し、ROI(投資対効果)の高い施策をクイックに実現します。
詳細はこちらhttps://www.tryangle-inc.co.jp/solution/ecseo/
SEO対策に課題を抱えていたり、SEO改善に興味のある方はお気軽にお問い合わせください。今後は、以下のようなテーマごとに詳細な解説記事も公開予定です。
ECサイトにおける構造化データの実装と注意点内部対策でクロール効率を高める手法画像の圧縮とLCP改善のポイントレイアウトシフト(CLS)の抑制とUI最適化GTMタグマネジメントとSEO評価の関係Core Web Vitalsのモニタリング手法とレポート環境
まとめ:ECのSEOは「運用×技術」で育てていくもの
SEO対策は一度の施策で完結するものではなく、継続的な分析と改善が求められます。
特にECサイトでは、日々のサイト改修や、商品・キャンペーンの更新によって常に構造が変化するため、運用しながら最適化していく体制が重要です。
TRYANGLEでは、データ分析・実装・技術的改善を一貫してサポートし、「検索エンジンにもユーザーにも優しいECサイト」を実現します。