ECサイト構築における“サービスレベル”の重要性
── ユーザーが本当に求めているのは、デザインや機能ではない。
はじめに
TRYANGLEコンサルティングチームの橋本です。ECサイト構築というと、どうしても「システム機能」や「見た目のデザイン」にばかり注目しがちです。しかし、ユーザーにとって本当に重要なのは、“スムーズで安心できる買い物体験”、すなわち 「サービスレベル」がきちんと担保されているかどうかです。
ここでいう「サービスレベル」とは、以下のような要素を含む、購入前〜購入後までの一連の体験の質を指します。
TRYANGLEでは、ECサイト構築の初期段階でクライアントへのヒアリングを行い、それをもとにサービスレベルの設計を具体化します。
サービスレベルを構成する具体的な項目
ECサイトにおける、①サイト概要/特性 ②基本サービス ③販売方法 ④施策内容 ⑤業務要件といった観点から、以下のようにカテゴリごとに、ユーザーにとっての重要ポイントと、構築時に検討すべき内容を整理します。
このとき、私たちはECシステムの機能は頭の片隅に入れつつも、決して機能ありきでは考えません。クライアントがどうしても譲れないサービスレベルがあり、それが標準機能で実現できないのであれば、カスタマイズをする、ということも視野にいれます。
【1. 会員・購入体験の柔軟性】
ゲスト購入が可能か会員登録時の特典(例:クーポン、ポイント)会員ランクの導入有無、ランク構造の定義入力フォームの分かりやすさ・項目数スムーズな退会手続き
【2. 注文・購入における配慮】
通常販売・予約販売・定期販売など、多様な注文パターンへの対応まとめ注文(同梱)や複数配送先への送り分けなど、柔軟な配送指定への対応商品番号入力による簡易注文、大量注文、見積依頼、OEM/卸対応など、法人ニーズへの配慮注文後の確認メールやステータス表示など、購入後の案内のわかりやすさと安心感
【3. 配送と受け取りの利便性】
配送日時指定ができるか海外発送対応の有無長期不在時の保管期間ルール配送方法や業者の選択肢
【4. 価格表示と割引設計のわかりやすさ】
通常価格と割引価格の表示ルール割引率・クーポン・ポイントの見せ方タイムセールや会員限定価格などの対象商品の示し方税込/税抜表記のルールと、ページ間での統一性
【5. 料金の明確さと柔軟な決済】
商品価格以外にかかる金額(送料・手数料など)の見せ方多様な決済方法(クレジット、後払い、キャリア決済など)領収書や納品書の発行方法
【6. 変更・キャンセル・返品の柔軟対応】
注文後のキャンセル・変更は可能か返品ルールの明確化と返送料負担の有無サポート窓口の分かりやすさ、対応スピード
【7. ギフト対応の細やかさ】
ラッピングやメッセージカードの有無ギフト時の納品書対応(価格表示なしなど)ギフト商品のカテゴリ分けと見せ方
【8. プロモーションの設計と透明性】
ポイントやクーポン施策の分かりやすさ会員限定セール・タイムセールなどのセール施策レビュー機能の有無と運用方針レコメンドの精度と表示位置
【9. 商品の見せ方とコンテンツ】
商品数の見せ方とカテゴリ構造の分かりやすさアイコン、ラベル、特集など視覚的な訴求要素SNS連携や商品以外の読み物的コンテンツ
【10. セキュリティ・信頼性】
不正ログイン・不正決済の防止策IP制御や3Dセキュア導入などの施策
なぜ「サービスレベル」が重要なのか?
いくら高機能なシステムを導入しても、デザインがどれほど魅力的であっても、
商品が探しにくい/情報が不明瞭決済に不安がある/手間がかかる配送が遅い/到着日が分からない問い合わせしづらい/対応が遅い
といった要素があると、ユーザーの信頼は一気に失われます。
つまり、デザインや機能は“手段”であって、“目的”ではないのです。ユーザーにとっての目的は「安心してスムーズに買えること」。そのために必要なのが「サービスレベル」なのです。
EC構築フェーズからサービスレベルを意識するために
サイト構築初期から以下を意識することが大切です。
各サービスレベル項目を整理し、「やる/やらない」の判断を明確化ユーザー目線で体験シナリオを描く機能要件だけでなく「運用オペレーション」と「情報設計」まで落とし込むチーム内でサービスレベルの共通認識を持つ
まとめ
ECサイト構築において最も重視すべきは、ユーザーのメリットです。サービスレベルはそこに直結する要素と言えるでしょう。どんなに高機能でも、デザインが魅力的であっても、ユーザーが「使いづらい」「わかりづらい」「時間がかかる」「対応が遅い」と感じれば、それはECサイトとしての本質を欠いていると言わざるを得ません。丁寧に設計されたサービスレベルがあってこそ、機能やデザインは本来の力を発揮します。
だからこそ、サービスレベルをあらためて見直し、ユーザー目線での最適化に取り組むことが、選ばれるECサイトへの第一歩となるのです。
今一度、ユーザー目線でECサイトの“当たり前”を見直してみませんか?