ECサイト分析に役立つGA4イベントの設定方法
この記事の概要
本記事では、Googleアナリティクス4(GA4)でECサイトのユーザー行動を正確に把握するために重要な推奨イベントとその実装ポイントについて、具体的な活用例を交えながら解説します。
TRYANGLEアナリティクスチームの高橋です。ECサイトの分析精度を高めるには、ユーザー行動を正確に把握するためのイベント計測が欠かせません。今回は、GA4で設定すべき主要なイベントについて、それぞれの役割や実装時のポイントをご紹介します。
基本はGoogleの推奨イベントを活用
GA4で設定するべきイベントは、基本的に推奨イベントとして公式に記載されています。
分析のためにさまざまなイベントを計測したくなりますが、アクセス数が多いサイトでは、1日のイベント数が100万を超えてしまい、無料版のBigQueryエクスポートの上限に達してしまう可能性があります。そのため、推奨イベントをベースとして、なるべくイベントパラメータに情報を追加するようにしましょう。
実際にECサイトの分析を行うにあたり、各イベントで取得しておきたい内容を以下に記載します。「オンライン販売向け」をベースに、「すべてのプロパティ向け」の一部イベントを使うことが多いです。
オンライン販売向け推奨イベント
add_payment_info(ユーザーが購入手続きで支払い情報を送信したとき)
購入手続きにおいて、ユーザーが支払い情報を送信したタイミングで発火するイベントです。支払い方法を個別に設定する専用画面があれば、その画面で「次へ」ボタンを押した際に設定します。ShopifyやSalesforce Commerce Cloudなどのプラットフォームには専用画面がありますが、ecbeingやEBISUMARTなど注文情報入力画面に支払い方法の選択肢が含まれている場合は、注文確認画面へ進む際にイベントを発火させます。選択された支払い方法はpayment_type
のイベントパラメータに値を格納しましょう。
add_shipping_info(ユーザーが購入手続きで配送情報を送信したとき)
ユーザーが配送情報を送信した際に発火させるイベントです。カートシステムによっては、配送情報の専用画面がなく注文情報入力画面で設定するケースもあります。その場合、注文確認画面に進むタイミングでイベントを設定します。配送方法の情報をshipping_tier
のパラメータに設定すると効果的です。
add_to_cart(ユーザーがショッピング カートに商品を追加したとき)
ECサイトで必ず設定したい重要なイベントです。商品詳細ページや商品一覧、検索結果、ランキング、お気に入り一覧、購入履歴など、さまざまなページでカート追加が可能なため、どのページで追加されたかをイベントパラメータで取得すると分析の精度が高まります。これにより、コンバージョン率改善施策の効果検証が容易になります。カートボタンについてのデザイン検討については「カートボタンを商品一覧ページに設置する理由」記事でも触れています。
add_to_wishlist(ユーザーがあとで買うリストに商品を追加したとき)
「あとで買う」や「お気に入りに追加」などに商品を追加した際に発火させるイベントです。どのページで追加が行われたかを記録すると後々の分析が容易になります。また、同じボタンでお気に入り登録を解除する場合もあるため、実装時にはトリガー設定に注意しましょう。
begin_checkout(ユーザーが購入手続きを開始したとき)
ユーザーがカート画面の「注文手続きに進む」をクリックした時や、注文情報入力画面が表示されたタイミングで発火させるイベントです。ログインの有無で購入フローが異なる場合は、カート画面のボタン押下時に設定することが望ましいでしょう。
purchase(ユーザーが購入手続きを完了したとき)
ECサイトにおいて最も重要なイベントです。基本的にECシステムから必要な情報は取得可能ですが、公式ドキュメントに従い、商品売上金額は税抜きの値を設定します。軽減税率と通常税率が混在する場合は特に注意が必要です。
refund(ユーザーが払い戻しを受け取ったとき)
ユーザーが購入をキャンセルし、払い戻しを受け取った際に設定します。キャンセル受付をしていない場合や使用頻度が低いケースもありますので、設定は可能なら実施する程度で構いません。キャンセル率の分析は、ECシステムの受注データで分析する方が正確でしょう。
remove_from_cart(ユーザーがショッピング カートから商品を削除したとき)
カートから商品が削除された際に発火します。単一商品の削除だけでなく、一括削除の場合も考慮して実装しましょう。
select_item(ユーザーが商品やサービスのリストから商品を選択したとき)
商品一覧や検索結果など、商品リストから特定の商品を選択した際に計測するイベントです。view_item_listイベントと組み合わせて分析を行います。item_list_idやitem_list_nameはview_item_listと同じ値を格納するように実装時に注意しましょう。
select_promotion(ユーザーがプロモーションを選択したとき)
サイト内のバナーやポップアップなど、プロモーション要素をユーザーがクリックした際に設定します。フロントエンドエンジニアと連携して、バナーにdata属性を設定し、それをトリガーに計測すると管理が容易になります。
view_cart(ユーザーがショッピング カートを表示したとき)
かご落ち分析や中間コンバージョンの把握に重要なイベントです。商品がカート内に存在している時のみ発火するよう設定することもあります。
view_item(ユーザーが商品を閲覧したとき)
商品の在庫状況や種類(通常商品・予約商品など)をイベントパラメータに記録し、カスタムディメンションやカスタム指標で活用すると、より詳細な分析が可能です。
view_item_list(ユーザーが商品やサービスのリストを表示したとき)
商品一覧ページを中心に計測しますが、「最近見た商品」や「おすすめ商品」エリアでも計測すると効果的です。CVRに影響を与える要素を把握するために、item_list_id
やitem_list_name
の設定を徹底しましょう。
view_promotion(ユーザーがウェブサイトまたはアプリでプロモーションを表示したとき)
バナーやポップアップなどの表示時に設定し、バナーの効果検証に役立てます。A/Bテストを行う場合はcreative_name
を設定すると、より具体的な分析が可能になります。
すべてのプロパティ向け推奨イベント
login(ユーザーがログインしたとき)
ログインしたときに計測します。分析時にあると便利な情報としては、”どこでログインしたか”が重要です。ナビゲーションなどのログインアイコンからログインしたのか、購入手続き内でログインしたのかなどの情報をイベントパラメータに付与して計測しましょう。かご落ち分析の際に、ログインした状態で進んだのか、購入手続き内でログインしたのかによって、かご落ち分析時に詳細な検証が可能となります。
generate_lead(ユーザーが問い合わせのためにフォームまたはリクエストを送信したとき)
ECにおいてはお問い合わせ完了時に計測するとよいでしょう。お問い合わせ種別が複数ある場合はlead_sourceのイベントパラメータに設定しましょう。
search(ユーザーがウェブサイトまたはアプリを検索したとき)
サイト内検索を行ったときに計測します。計測する際のトリガーについては気をつける必要があります。検索ボタンを押下したときに計測するか、検索結果ページを表示したときに計測するかによって意味合いが変わってしまいます。純粋な検索アクションだけ取りたいという場合は前者のトリガーで計測するようにGTMで制御する必要があります。
また、イベントパラメータに検索結果の件数を格納できると、どんなキーワードで0件ヒットが起こっているかを検証でき、機会損失を防ぐための分析が容易になります。
select_content(ユーザーがウェブサイトまたはアプリのコンテンツを選択したとき)
ECサイト内にブログ記事や特集ページがある場合に設定します。コンテンツへのリンクがクリックされたときに計測します。イベントパラメータのcontent_typeに”コラム”や”特集ページ”などの値を入れておくと良いでしょう。
share(ユーザーがウェブサイトまたはアプリのコンテンツを共有したとき)
商品詳細ページにSNSのシェアボタンが設置されている場合は計測します。イベントパラメータについては、methodでSNSの種類、item_idで商品コードを計測すると良いでしょう。
sign_up(ユーザーがウェブサイトまたはアプリでアカウントを登録したとき)
会員登録時に計測します。ログインイベントと同様、”どこで会員登録されたか”をイベントパラメータへ格納できるようにしましょう。ナビゲーションから会員登録されたのか、購入手続き内で会員登録されたのかによって、かご落ち分析をする際にも役立ちます。
まとめ
GA4の推奨イベントを活用し、適切なイベントパラメータを設定することで、ECサイト分析の精度が向上します。ユーザー行動を詳細に理解し、効果的な施策に繋げていきましょう。
TRYANGLEではGA4の計測設計、設定サポートも行っています。ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。